婦人公論サイトで、「70代夫婦がガーデニングから人々との交流で脳が活性化されました」というお話を紹介していました。
これは、「オープンガーデン」という英国発祥のガーデニングスタイルです。
イギリスの小金持ちがちょっとしたバラ園をこしらえて、この庭を誰かに自慢したいという欲求から「オープンガーデンでアフタヌーンティをしましょ」、というムーブメントを作ったのが発祥です。
コトバンクでは、この意味を「自宅の庭を、ある期間人々に公開すること」としていますが、実際は、「ある期間」ではなく「通年」です。(自治体が地域イベントとして各家庭の庭を紹介するのは期間限定です)
この午後ティ的な流行が日本に入ってくると、上品かつ有効な町内コミュニティとして、根付きました。
今も各自治体が広報誌、つまり紙媒体の市の広報・町の広報に「今月のオープンガーデン、○○さんのお宅拝見」等と整えられたガーデニングの自宅庭写真と家人の写真なんかを掲載していたり。
東京都内の場合、狭小住宅やマンションが多く庭付きの一戸建てが少ないため、オープンガーデンの習慣はありませんが、東京市部や23区隣接の神奈川や千葉の市町ではこれが盛んです。
自宅庭園を公開するといっても大金持ちが庭師を入れキメた大庭をこれみよがしにお披露目するのではなく、建物含め40~50坪ほどの敷地内の庭部分を自分でDIYのガーデニングし、創意工夫したその成果を「近所の人に紹介し(会話し)楽しんでもらう」という、コミュニケーションツールとして見てもらうものです。
オープンガーデンにしてなくても、普通の住宅街では、生け垣に水やりをしている奥さんにいつもここを通るお婆さんが「きれいなお花ね」と話しかけたり、馴染みの御近所さんが「今年は金木犀の香りが強いですなー」とか話しかけるのは、当たり前の見慣れた光景です。
トイプードルやマメシバ等を連れて散歩していると通行人の女の子が「カワイイ!」といって話しかけてくるのと同じでオープンガーデンにするとコミュニケーション不足になりがちな人でも花をきっかけに近所とのコミュニケーションがとれ、これが孤立化や引きこもり防止の大きな役割になります。
婦人公論の記事ではこのコミュニケーション(ガーデニングした庭にベンチを置いて通行人を招いたりするなど)が大切だとしています。
「庭を公開すると、赤の他人が自宅敷地に立ち入り、不安」なのは当然ですが、逆にオープンにすることで、日中、ご近所の監視の目が行き届いているという発想もあります。
高級車窃盗は下見必須ですが、車種の物色は通りがかりにチラッと駐車場を見て確認するだけで、近隣の道路付け調べに重点を置くので、オープンガーデンであってもなくても関係なし。
振込め詐欺や闇バイト強盗は、指示役は買った名簿を元に自分は影に隠れて金欠の無職若者にダメ元で犯行させるので、下見なんかは絶対にしません。
空き巣にしても、通行人への目隠しに垣根や壁を使うのに、庭が開放されてるといつ近所の人と庭の中で鉢合わせするか分からずリスクが高いです。
実際、オープンガーデンの家が犯罪被害にあったという話はニュースにもあがりません。
お年寄りが、しょっちゅう庭に出てガーデニングをしていれば、近所の人は少なからず見ているので、少なからず(新聞が溜まっている程度の)見守り代わりになります。
また、介護80/50問題で親の在宅介護を抱え、うっくつすることが多い日常を抱えている壮年期の介護者には草花イジリは癒しにつながります。
せっかく庭付きの一戸建て住宅に住んでいるのだとしたら、それを活用しない手はないし、その庭が荒れていると家庭不和を連想されると思いがちになり、ますます社会的壁の高さが上がります。
年末や年始のヒマな時があれば、庭の手入れに気を使ってみるのも一考です。