東京都のキャリア塾と老人ホーム人材難

東京都が先日、新宿で再就職シニア向けセミナー【東京セカンドキャリア塾】を開催しました。今年で7年目のこのイベントは人手不足解消とシニアの生き甲斐創出の両方に寄与する意義あるものです。

介護の現場も、余裕があってセカンドキャリアを楽しむために再就職するシニアが増えてくれるともっと円滑に回るんじゃないかと感じます。

この9月から11月の間に東京23区内で過去にうかがったことのある訪問介護事業所の近くを通ったら、数か所そこが空きテナントになっていました。
営業中の近隣事業所に事情を聞くと、おおかたが「人手不足で閉鎖して利用者は地域包括さんらの尽力で周りの訪問さんが引き継いだ」と説明してくれます。

現場ではとにかく人手不足で、社長さん自ら訪問に出ているため、通りがかりにご挨拶をしようとしても事務所は「外出中」のボードが掲げられ、無人でカギがかけられしまっている、この確率は7~8割近いはずです。

弊社で紹介している北関東の幾つかの介護付きおよび住宅型有料老人ホームでも人材難が経営上一番の弱味で、この状態に至らないよう介護スタッフに理不尽な要求・身勝手な振る舞いを取られても、利用者に影響しなければ経営者側が折れている傾向をよく目にします。

東京都内の老人ホームより労働自体「楽」でのんびりできる田舎の施設ですが、人口が少ないぶん取り換えが効かず、人材売り手市場(求人募集過多)状態が解消できないようです。

生計のため働く人向けに求人すると給与や福利厚生に関する要求がやたら多い。また高齢であっても介護業務経験が長い転職者もスレていて経営側の足元を見る傾向が多いです。

これに比べると東京都が主催したイベントに行くような「定年退職して厚生年金も入るけど新しい経験がしたいな」と考えている未経験シニアを迎え入れる方が、老人ホームなどの施設でも訪問や通所介護でも、健全な雰囲気が作れるかも知れません。

介護人材を採用するにあたり通常の求人では、一人最低でも50万円、高いと150万円以上の「支払わなきゃいけない」実費がかかります。
最近はタイミーを始めとした隙間バイトから上手に正社員につなげればもっと割安になるかも知れませんが、とにかく金がかかる。

厚生労働省が集計調査し推測した「都道府県別介護職員必要数」によると、全ての自治体でマンネリ人手不足ですが、その対策というと、処遇改善・外国人材・介護の魅力向上、といったありきたりなものです。
処遇改善には限度があり、後進国の外国人材が今後後進国化していく日本にいつまで働きにくるかも疑問です。

東京都公式ページの中にキャリア塾参加女性へのインタビューで「時間が沢山あるので少しでも世の中の役に立てれば」という回答がありました。

カルチャー講座に積極参加したり、スマホでネットのサークル活動にいそしんでいるシニアは無数にいます。
介護の魅力向上は難しい気もしますが、個々の高齢者施設や在宅介護事業者が他社と差別化した魅力をポジティブシニアに発信できれば、そこだけは人材面で生き残れるのかなと感じます。