老人ホーム入居は要・覚悟
老人ホーム紹介業者である弊社は、東京都23区や東京市部、そして東京に隣接する埼玉南部・千葉南部・神奈川県の川崎・横浜など、老人ホームに居住するための費用も高額なエリアに住む高齢者に、群馬県・栃木県・茨城県など月額8万円から10万円で住める割安エリアの施設を紹介しています。
入居を希望する本人ご家族と面談すると、皆さん「東京都内で暮らしてきたのに群馬や茨城で最期を迎えるのか…」と悩まれます。
これは「東京から群馬に行く」という具体的な距離の遠さがあるので分かりやすい。
しかし、東京23区で在宅生活を送ってきた人が同じ区内の老人ホームに入る場合も、全く違う新世界に行ってそこに死ぬまでいなきゃならない、住み慣れた家で近所づきあいをしながら死ねない、という点では群馬や栃木にいくのと同じくらい、覚悟がいるものです。
老人ホーム紹介をためらうケース
弊社が老人ホーム紹介のために面談する方々にも、東京から離れたくないと逡巡している高齢者・家族がいます。
紹介する側から見ても、地方にお連れするのは気が引ける、もう少し工夫すればまだまだ都内で在宅生活を送れるんじゃないか、というケースは多々あります。
そういった場合は、担当の地域包括支援センターの相談員さんやケアマネさんとお話しし、訪問介護と通所介護を組み入れて、もう少し在宅で頑張ってもらうようご提案しています。
暴力や徘徊がとんでもないレベルだと、心労を抱えた家族の「絶対老人ホームへ入れて解放されたい」というお気持ちから提案は却下されますが、そうでない場合は、しばらく在宅で辛抱できたりするケースも多いです。
以下、老人ホームへの入居はせずに、訪問介護などの在宅サービスを使って都内でそのまま暮らすことのメリット・デメリットその他について、考察していきます。
老人ホーム入居か訪問介護か
身体機能が衰えたり認知症の発症により認知機能が低下すると、日常生活を送る上で他人からの介護・介助が必要になります。
この時に、高齢者本人や家族は、「自宅で在宅介護生活」なのか「老人ホームに入居」するのか悩むことになります。
訪問介護(+通所介護)を利用しながら自宅生活を継続するか、施設入所かは、高齢者本人にとっても家族にとっても「今生の別れ」に近い離れ離れ感がありますし、それは大げさではありません。
訪問・通所・福祉用具・リフォーム
家族に迷惑をかけたくないから早く老人ホームに入りたい…というシニアもいますが、最期まで住み慣れた我が家で家族に囲まれ過ごしたい…というシニアは多いです。家族にしても、親を介護施設に入居させるのは姥捨て山みたいな心持であり忍びない、という子息が多い。
そんな場合、訪問介護やデイサービス等の通所介護を利用すれば、シニアや家族の希望をある程度の期間は叶えることができます。以下はそれらサービスの大まかな分類です。
- 訪問型サービス
訪問介護、訪問入浴、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導(医療ケア・栄養指導など)、訪問看護※訪問介護はホームヘルパー(入浴や排せつ、食事などの介助等)、訪問看護は看護師さんが医師の指示に基づく医療行為を行うサービス(注射や点滴の管理、床ずれ処置、バイタルチェック等) - 通所型サービス
通所介護(デイサービス)、リハビリ型デイサービス、ショートステイ(特養や老健が提供する宿泊型サービス)など。
これらに福祉用具のレンタル・購入、介護リフォーム(住宅改修)をミックスさせて自宅を在宅介護仕様にして、快適なライフスタイルを作れます。
(介護認定を受けた後の介護リフォームについて、この2024年の段階では、23区の都営住宅に賃貸で住んでいる要支援1の方のお風呂を浴室丸ごとリノベーションし、介護仕様にして更に全自動給湯にして3万円もしなかったケースがありました。東京都内は競合が多いからかリフォーム代は安いです)
訪問介護で在宅暮らしするメリット
上記のように、在宅介護が受けられる態勢を整え、ボケ防止も考えて可能な限り自立して、必要なぶんだけ介護サービスを受けるようにすれば、この自宅ライフには様々なメリットがあります。
自立、つまりできるだけ自分のことは自分がやりながら介護サービスを受けることにしたら。要支援段階では地域包括支援センターさんが面倒見てくれて、要介護の段階になったら自治体ケアマネジャーさんが作成したケアプランに基づき、自分じゃ無理そうな食事・排泄・入浴の介助など「身体介護」や、炊事・掃除・洗濯など「生活援助」が受けられます。
自由度が高いというメリット
この自宅生活の最大のメリットは、老人ホーム生活と比べ、「自分の自由度が高い、時間などに拘束されず完全に今まで通りの生活ができる点」です。
老人ホームであれば、外出自由な施設やケアハウスでも門限や行き先を告げなければなりません。これは入居者の安否を知るために重要で当たり前のことですが、これを嫌う高齢者もいます。
また、ホームと違い食事の時間もメニューも自分で決められるので、家族で支えあえば今まで通りの食卓が囲めます。
(ただし、独居の場合、訪問介護を入れていたとしても、食事は大体コンビニ食になり、荒れた食生活から不健康な暮らしにかたむく場合が多いです。また、男性高齢者は都内で独り暮らしをしていて近所とのつきあいがなじめず引きこもりになることが多く、この解消には老人ホームに入居して誰かと触れ合わないと暮らせない状況に持っていくしかないかも知れません)
個別対応してもらえる時間のメリット
訪問介護を受けることのメリットは、老人ホーム入居に比べ、介護士さんと1対1で完全に自分だけの介護をしてもらえる時間、というのが確保されているという点です。
当然ながら老人ホームも同様に介護士さんらが入居者一人一人を丁寧にケアしてくれます。
しかし、施設介護は介護士1人が複数人の利用者を同時間帯に相手をしなければならないため、人手不足もあって、ある利用者の介護中に別の利用者のトラブルが発生したりして、慌ただしくなってしまうことも多いわけです。
その点、訪問介護の場合は、我が家に来てもらってる間は、完全な個別対応の1対1で自分のことだけ世話してもらえるというメリットがあります。
予算が少なくてすむメリット
訪問介護と老人ホームとを比べると、老人ホームではかかる月額料金(家賃・食費・管理費)がまったくかからない(賃貸住宅のシニアには『家賃』がかかりますが)というメリットがあります。
在宅外語サービスなら、シンプルに介護サービスを受けて支払いは介護保険の1割負担分の料金だけで済みます。
このメリットは、5~6万円しか年金がなく福祉事務所の境界層措置を受けている低額年金受給者にとっては重大マターです。
介護保険の1割負担
介護保険の1割負担で介護サービスを受ければ、月2万もあればけっこうなサービスが受けられます。これは、
「介護保険によって介護サービスを受けてる本人は1割しか負担しなくていいよ、残りの9割は介護保険(行政)側が負担するからね」
という介護保険のありがたい制度によるものです。
上記の
〝都営住宅に住んでる要支援1の人が浴室丸ごとリノベーションし3万円もしなかった〟
のは、
――実際は30万円くらいリノベーション代がかかったけど、本人負担は1割の3万円で残りの27万円弱は行政が払ってくれた――
ことによります。
というわけで、特に低額年金受給者は本門介護を選択したほうが良い、というかこれ以外の道はないかも知れない、ということです。
生活保護者・境界層の高齢者
東京都内に住む生活保護者・境界層の高齢者は、原則的にその区内の老人ホームに入居するべき、地方に行くとしたら「介護付き有料老人ホーム」でなきゃダメ、という福祉事務所さんの決まりみたいなものがあります。
例えば、新宿区の福祉事務所さんの場合、生活保護費受給者は、老人ホームを選択する場合、群馬県のある特定の1社の老人ホームに直接取引をしているようです。
新宿から見て群馬より近い、埼玉県や千葉県のホームでもお断り、もしくはその群馬の特定の老人ホーム以外に移るなら、生活保護を打ち切りますよ、といった不思議な決まりです。
何度か新宿福祉事務所に行きましたが、なぜその特定のホーム限定なのかとか、詳細は「答えられない」とのことでした。
こういう決め事・風習は東京23区それぞれの区でルールが違いますが、「我が区で生活保護を受給したまま東京都外へ行ってもいいよ」、と言ってくれる区であっても、ギリギリ埼玉県南部か千葉県南部までという福祉事務所さんの許容範囲があります。
埼玉南部や千葉南部でお取引頂いている老人ホームは総じて「相部屋(6畳で3人)」が多いです。
福祉事務所のケースワーカーさんが、毎年1度くらいは、生保受給者が入居している老人ホームに「安心快適に暮らしているか」を調査しに行くため、この【生保受給したままの他自治体への転居の範囲ルール】があるようです。
(遠すぎると交通費経費がかかりすぎるかららしい)
生活保護者だからタコ部屋の相部屋でも贅沢言ってられないだろう、といえばそれまでですが、あまりに窮屈な施設を「終の住み家」として紹介するのは、かなり気が引けます。
なので、都内在住で都内隣接エリアしか選べない生保受給のシニアには「貴方の行けるホームは狭くて息苦しくて心が折れますよ」と正直に報告して、訪問介護を選んだ方がマシだということを教えています。
ホームでなく訪問介護で暮らすデメリット
訪問介護で暮らすさいのデメリットのひとつに、介護サービスを受ける際、訪問会社から派遣されてくるホームヘルパーさんと1対1になってしまうことで、相性の悪いヘルパーやサボりがちなヘルパーが訪問介護を担当しても「断りにくい」という点があります。
この点でいうと、老人ホームの場合は各ヘルパーさん達は周りの目があるので、利用者さんをぞんざいには扱えないし、利用者としても嫌な思いをしたら〝速攻〟でホームに文句を言って担当を交代してもらうことができます。
訪問ヘルパーへのクレーム
しかし訪問介護の場合、利用者としては、訪問会社の全容を知らないから、「もしクレームを入れてもそれが反映されず、ヘルパーの対応がさらに悪くなるんじゃ?」という当然の疑問・想像をもって泣き寝入りをするようなケースもなくはありません。
(現実には、逆、つまりヘルパーさん側こそ『嫌な利用者だけど他のスタッフに迷惑かけられないし』という自己犠牲の精神でやってくれている方が多いですが)
ただ、この担当ヘルパーに対するクレームは、本当に困っているなら訪問会社でもいいし、役所に直接電話しても解決してくれるものなので、もっと簡単に考えて差し支えありません。
担当者が慣れるまで自分が指示する必要がある
訪問介護のプロである専門スタッフとはいえ、担当者が慣れるまでは、自分が指示する必要があります。
24時間介護してくれない
24時間、介護スタッフが待機していて、ちょっとした事態にも対処してくれる老人ホームと比べ、在宅での訪問介護サービス利用は、訪問スケジュール通りの曜日や時間しか助けてもらえないことが大きなデメリットと言えます。
訪問介護を入れたことで家族の介護負担が軽減されるとはいえ、特に夜中の徘徊やせん妄、頻尿への対応等は、結局、家族の負担です。それほど楽になるとも言えません。
夜間訪問介護に対応してくれる訪問介護事業所はなくもないですが、料金的に考えると、まだ家族が骨を折った方がマシだったりもします。
まして、「昼夜の訪問介護をいれなくちゃ危険」、という状況なら、迷わず老人ホーム入居に考えを改めた方がいいでしょう。
いずれにしても、老人ホームと比較してみての訪問介護のメリットとデメリットを理解してもらい、最適な介護サービスを選ぶことが大切です。残りの人生そのものなので、じっくり時間をかけて損はありません。